「こんな簡単な計算を間違うなんて」
「テストのときは見直ししなさいって言ったでしょ」
「書き間違いでバツって…」

こんなことでお悩みではありませんか？

発達障害に限らず、ケアレスミスでテストの点数を減点されてしまう子は多いです。

「問題は解けているのに…」と思うと、あまりのもったいなさに親御さんはガクッとしてしまいますよね。

たかがケアレスミスですが、そのミスが受験の合否を決めてしまうこともあるので、決してあなどって考えてはいけません。

そこで今日は、発達障害の子のケアレスミスをなくす対処法を解説していきます。

発達障害とケアレスミス

発達障害とは、お子さんの発達のパターンが通常よりも著しく異なる状態を指します。そのため、社会的な相互作用、言語の発達、学習、行動の管理などに影響を及ぼす可能性が高くなります。

つまり、ケアレスミスは誰にでもやってしまうことではありますが、発達障害があると、特にケアレスミスをしやすいと言えます。

ここで注意したいのが、「うちの子はうっかりしているから…」という考え方。

実は、ケアレスミスとは、うっかりではありません。

この点を含め発達障害のお子さんのケアレスミスに関する知識を下記に沿って解説します。

• ケアレスミスってうっかりじゃないの!？
• 発達障害の子のケアレスミスの困りごと

ケアレスミスってうっかりじゃないの!?

ケアレスミスは、慎重さや気配りの不足から生じる、注意力の欠如による誤りやミスのことです。

つまり、ケアレスミスとは、単なるうっかりではなく、状況を正しく理解できずにミスが生じることを意味しているのです。

発達障害のお子さんは、特性によって慎重さや気配りに欠ける場合が多いので、ケアレスミスがより頻繁に起こる可能性が高いと言えるでしょう。

とくに発達障害の中でも思考の多動性を持つADHDやこだわりを持ちすぎるASDを抱えるお子さんは、特性からケアレスミスを頻発してしまう恐れがあります。

ケアレスミスの改善方法や対処方法は後ほど詳しく解説します。

発達障害の子のケアレスミスの困りごと

ケアレスミスはうっかりミスではなく発達障害の特性によるものなので、集団生活や日常生活にも次のような影響がある点に注意してください。

• ミスが多く効率的に素早くタスクをこなせない
• コミュニケーションを取ると誤解される
• 物の管理ができない

この他にも困りごとはありますが、まず上記の困りごとを解消するところからスタートします。

もちろん最初は難しいかもしれませんが、毎日の習慣や訓練でお子さんがみるみる変わるので安心してください。

まずは以下で困りごとの類型を見ていきましょう。

ミスが多く、効率的に素早くタスクをこなせない

発達障害を抱えるお子さんは仕事や学習のとき、細かい指示や注意が必要なタスクにおいて、ミスが多発する傾向にあります。
発達障害にはADHD、ASD、LDどれもタスク処理能力を苦手を抱えやすい特性があるため注意が必要です。
たとえば、重要な資料を見落とす、期限を守れないなど、親御さんも思い当たることが沢山あるでしょう。
そのため、ミスが多く効率的に素早くタスクをこなせないことも多いです。

コミュニケーションを取ると誤解される

友だちとの交流やコミュニケーションにおいて、相手の発言や表情のニュアンスを理解できないことから、誤解が生じることもあります。
仮にADHDのお子さんは突発的に思ったことを口にする特性もあるため、他のお子さんを傷つける言動をしてしまうかもしれません。
このような対人関係における苦手を抱えるのも発達障害の困りごとになります。

物の管理ができない

物の場所や整理が苦手なため、必要なものを見つけるのが難しくなり、紛失や忘れ物がどんどん増えることも困りごとになります。
そもそも整理ができなければ、場所を覚えることもできないことから、お子さんは負のスパイラルに入ってしまう恐れもあるでしょう。
物の管理ができないことによって、忘れ物を頻発すると中学生から内申点を下げられることもあるので注意してください。

発達障害とケアレスミスの関連性

発達障害と一口に言っても、自閉症スペクトラム障害（ASD）、注意欠陥多動性障害（ADHD）、学習障害、発語障害、発達言語障害など、様々なパターンがあります。
各パターンにおいて、ケアレスミスがどう作用してしまうのかを簡単に解説しておきます。

ADHD（注意欠陥多動性障害）

注意散漫

注意を一点に集中させることや持続させることが難しく、細部に気がつきにくい傾向があり、仕事や学業においてケアレスミスを引き起こす原因となります。
そのため、細心の注意が必要な状況では、その作業が困難な場合もあります。

ASD（自閉症スペクトラム障害）

理解不足

ASD（自閉症スペクトラム障害）の子はコミュニケーションを取るのが難しい傾向があります。
というのも、相手の立場に立って考えることが苦手な特性があるからです。
またコミュニケーションを取ったとしても、言葉や態度のニュアンスを理解できず、細部への気配りもできません。
この傾向は仕事や日常生活でうっかりではなく、注意不足によるケアレスミスにつながります。

学習障害の場合

学習の遅れ

学習の遅れによる理解不足がケアレスミスを引き起こす恐れがあります。
計算に苦手を持っているとすると、お子さん同士でお菓子を分けるときに簡単な計算が遅れ、コミュニケーションに難が出てしまうこともあるでしょう。
このように学習の遅れは日常生活にも影響を及ぼすこともある点に注意が必要です。

発達障害の子のケアレスミスをなんとかする改善法・対処法

ケアレスミスに対処するためには、個々の特性や課題に合わせたサポートやトレーニングの一例は次のとおりです。

• ケアレスミスが発生しやすい状況やタイミングを把握し解決する
• コミュニケーションの改善や理解を促進する方法を知る
• 環境を整える
• 感情を理解し、コミュニケーションが取れる工夫をする

それぞれ解説します。

ケアレスミスが発生しやすい状況やタイミングを把握し解決する

ケアレスミスが発生しやすい状況やタイミングを把握し解決する方法は次のとおりです。

• お子さんに合った学習軽価格を立てる
• タスクを分割し、明確に指示をする
• 定期的に改善点を見つけていく

それぞれ解説します。

お子さんに合った学習計画を立てる

お子さんの個性やペースに合わせた学習計画を作成し、タスクの難易度や締め切りを適切に設定してあげることを優先してください。
タスクの難易度の調整も勉強しながら進めることで、徐々に調整できます。
自分のペースで少しずつこなしていけば、ケアレスミスが発生しにくい状況を作れる可能性が高まります。

タスクを分割し、明確に指示をする

大きなタスクを小さなステップに分割し、明確で具体的な指示を出すようにしましょう。
大きなタスクのみでは、「何をしたらいい状況かがわからず」に脳の処理が追いつかない可能性が高まります。
たとえば、テスト勉強をしようではなく、テスト勉強のために教科書の◯ページを勉強すると、タスクを分割できたことになります。
このようにすると発達障害の子でも細部に注意を払うことができるようになります。

定期的に改善点をみつけていく

定期的なフィードバックやサポートをし、進捗や課題について親子で一緒に話し合いましょう。
ケアレスミスはミスの中でも小さいものの日々の確認をおこなわなければ、見逃してしまう恐れもあります。
日々の確認をし続けると事前にミスを把握しやすくなり、どうしたらミスを減らせるのかを見つけやすくなります。

コミュニケーションの改善や理解を促進する方法を知る

コミュニケーションの改善や理解を促進する方法は次のとおりです。

• コミュニケーションスキルのトレーニング
• ビジュアルエイドの活用
• 見通しがつく状況を作る

それぞれ見ていきましょう。

コミュニケーションスキルのトレーニング

発達障害の子でもできる、具体的なコミュニケーションスキルのトレーニングを積みましょう。
コミュニケーションスキルは日々の積み上げになるので、一朝一夕に身につくものではありません。
たとえば、親子間での会話のロールプレイングなどが当てはまるでしょう。
非言語的なサインや相手の感情を理解する方法を学んでいくと、他のお子さんからの誤解が少なくなります。

ビジュアルエイドの活用

言葉だけでなく、ビジュアルエイドやカードなどの視覚的な手段を活用して、情報や指示をわかりやすく伝えます。
言葉のコミュニケーションでは、状況を想像できる状態も必要ですし、相手が何を指しているのかをニュアンスで読み取らなければなりません。
そのため、ビジュアルエイドやカードなどの視覚要素も取り入れながら訓練することで、日常会話が少しずつスムーズになります。

見通しがつく状況を作る

発達障害の子が不安を感じる可能性のある社交的な状況や変化を事前に教えてあげましょう。
見通しがつく状況を作ってあげることで、ストレスや混乱を軽減することができ、ゆっくりと自分のペースで進めます。

環境を整える

発達障害の子の日常生活の中の環境を調整してあげると、ケアレスミスを最小限に抑えられます。
環境を整える一例を紹介すると次のとおりです。

• 静かで整頓された学習環境
• 一目でわかるものを用意する
• 使いやすい道具や環境を用意する

静かで整頓された学習環境

学習スペースを静かで整頓された状態に保ち、発達障害の子が気を散らす要因を最小限に抑えてあげましょう。
注意力が散漫になる状況は、発達障害を抱えていないお子さんであっても、学習効率が落ちます。

一目でわかるものを用意する

学習環境では一目でわかるものを用意することが大切です。
どこにノートがあるのか、教科書があるのかなどをすぐに把握できるようになれば、整理整頓が苦手で探すのに苦労する手間が省けます。

使いやすい道具や環境を用意する

学校や自宅で、例えば不器用な子でも使いやすい箸や、整理しやすく色分けした引き出しを用意しておきます。
すると、先ほどお伝えしたように必要なものを探す手間が省け、学習効率がアップします。
もちろん、中高生になっても色分けが必要かと問われたら、慣れれば必要ないですが、反対に慣れていなければ時間を長く取りましょう。

感情を理解し、コミュニケーションが取れる工夫をする

発達障害の子の感情やコミュニケーションの特性を理解してあげるようにしましょう。
適切な対応を取ってあげることで、落ち着いて行動できるようになります。

感情を言葉に変換する手段を持つ

発達障害を抱えるお子さんが感じている感情を、言葉に変換しやすい手段を親子で一緒に考えていきましょう。
言葉への変換がうまくできれば、伝えたいことが伝えられ、お子さんのストレスも軽減できます。
また副次的に親御さんも周囲の人たちも、お子さんの感情を理解しやすくなり、お子さんがイキイキしやすい環境を手に入れられるでしょう。

言葉にできない感情も理解してあげるよう心がける

発達障害のお子さんはコミュニケーションが苦手ですが、周囲と同じく言葉にできない感情を持ち合わせています。
発達障害を抱えていないお子さんと同様に、言葉にできない感情を理解してあげることで、安心感を与えられます。
たとえば、言葉にできないけど、無性にイライラしてしまうこともあるでしょう。
このような状況で心境を汲んであげられるよう心がけておくと、お子さんに安心感を与えられます。

ストレスを管理できるようにする

ストレスや不安に対処するため、ストレス管理の方法を教えてあげましょう。
リラックスする方法や瞑想、深呼吸のやり方を学ばせ、心を自分でコントロールできるようになると、不安感から生まれるケアレスミスを軽減できます。
発達障害を抱えるお子さんは、抱えていないお子さんに比べるとストレスを抱えやすいため効果も高いと考えられます。

周囲の人たちも、発達障害について学ぶ

ケアレスミスの予防や対処方法に関する教育は、発達障害を抱えるお子さんだけではなく、その周りの人々にも極めて重要です。
周囲の人たちに発達障害の特性を伝え、理解と共感を促進し、積極的に支援してもらえる環境を築いていきましょう。
また発達障害のお子さん自身に対して学びを与えましょう。
すると、お子さんは自分の特性や課題を理解し、適切な対策を考えられるようになります。

さらに、お子さんの個性やペースにあったサポートがあれば、ケアレスミスが生じる可能性の高い状況でも、上手に対応できるスキルを身につけられるようになるでしょうし、自己管理能力の向上も期待できるでしょう。
それと同時に、周りの人々に対しても発達障害についての教育を行うと、理解と共感が生まれます。
発達障害のお子さんの行動やコミュニケーションの特性が理解されれば、不必要な誤解や偏見もなくなっていきますし、支援体制が強化されていくようになります。

このように、学校などのコミュニティにおいては、協力的で包括的な環境を築くことが何より重要なことです。
発達障害のお子さんの行動やコミュニケーションの特性を伝えることは、以下の点でとくに効果的です。

個々の特性への理解

発達障害のお子さんは、同じ診断を受けていても、個々の特性が異なります。
教育を通じて差異を理解することで、適切なサポートが提供されやすくなります。

コミュニケーションの向上

発達障害のお子さんとその周囲の人々に対して、効果的なコミュニケーション戦略を学ぶことは、相互理解を高め、ケアレスミスを防ぐ手段です。

柔軟な環境への適応

発達障害の子の特性を伝えることは、学校や家庭などの環境が、お子さんとって適切であるかどうかを判断する材料です。
すると、必要に応じて環境を調整できる柔軟性が生まれます。
ケアレスミスに対する対処法や周囲の人たちへの教育は、単なる問題の発生を防ぐだけでなく、より包括的で理解の深まった実社会を形成することにつながります。
これらのことからお子さんが自分らしい生活を送る場合の困りごとが軽減されていくので、誰にとっても、より良い社会が形成されていくでしょう。

発達障害のケアレスミスをなくすには、まず特性を受け入れてあげることが第一歩

発達障害のお子さんのケアレスミスの予防と対処には、総合的なサポートが不可欠です。
お子さんのスキル向上はもちろんですが、周りの人々や環境も調整されることで、より良い生活や環境を築いていくことが可能になります。
ケアレスミスをなくしていくには、教育とトレーニングが重要な鍵です。
発達障害のお子さんへの理解を深め、個々の特性やニーズに焦点を当てたサポートが提供されれば、ケアレスミスを予防することが可能となります。
それと同時に、発達障害のお子さんと周囲の人々が効果的なコミュニケーションスキルを磨くことは、信頼関係の構築と誤解の軽減に繋がります。
また、環境の調整も不可欠です。
学校や家庭でのアクセシビリティの向上や、整頓された作業環境の提供により、発達障害のお子さんでもストレスなく適応できるようになるからです。
さらに、お子さんの感情を理解していくと、より良い関係を築くことができるので、ストレス管理の手段として重要です。
安心できる環境を作ってあげれば、ケアレスミスの頻度が少なくなり、不安が原因で生じるストレスやミスをなくしていけます。
「こうしなさい」ではなく、「どうしたらできるかな？」と一緒に考える社会は、誰にとっても幸せな社会を構築し、多様性を受け入れる素地を育めるでしょう。