WISCって何がわかるの?検査の目的や4つの指標を詳しく解説!
「WISCって何?」
「WISC-4とかの名前があるけど、どんなことがわかるんだろう?」
「子どもがWISCの検査を受けるんだけど、大丈夫かな?」
こんなお悩みはありませんか?
WISCは発育の状態を検査するテストであり、WISC‐4が一般的に推奨されます。
今回の記事ではWISCとは何かを紹介しながら、検査の目的や4つの指標を詳しく解説していきます。
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WISC-4とは?
発育の状態に不安があるとき、医師や専門家から進められるのがWISC-4です。
※正式名称は WISC-Ⅳ (Wechsler Intelligence Scale for Children-Fourth Edition)
5歳0か月から16歳11か月の子どもを対象とした、児童用知能検査となります。
実は、世界ではほとんどの国がWISC-5を使用しているのですが、なぜか日本ではWISC-4が使用されているのが現状です。
WISCをより詳しく知るために、以下の内容に沿って解説していきます。
WISC-4でわかること
WISC-4の検査をすると全知能と各知能の結果が数値で表されます。
検査結果を数値で渡されるので、低い=悪いと考えがちかもしれません。
ですが、ここで言う知能とは、
『目的を持って行動し、合理的に考え、効率的に環境と接する個人の総合的能力』
のことです。
注意して欲しいのが、あくまでも『合理的で効率的に』という部分。
確かに現代社会はスピード重視なので、合理的に効率的に出来た方がいいように感じますが、何もすべてのことを合理的に、効率的にやる必要はありませんよね。
つまり、WISC-4の検査とは『現代社会や学校教育の都合に、どれくらい対応していけるか?』ということが数値で出される検査ということです。
ですから「合理的じゃなくてもいいよね」「効率が悪くても丁寧にやろう」と思えば、それでいいんだということを覚えていてください。
WISC-4の目的
WISC-4は、5歳0か月から16歳11か月の子どもの認知機能や学習スキルがどのくらいあるか、見当をつけるために利用されています。
例えば、言語理解(言葉に関すること)の数値が低く、知覚推論(目でみたことや空間のこと)の数値が高ければ、「〇〇ちゃんは、字で書いたものや言葉で伝えるより、イラストや図に書いて見せてあげた方が理解しやすい」というサポートの方法を見つけることができるのです。
テスト結果を親御さんがどう捉えるかは「WISC-4の検査をすると、うちの子の得意と苦手がわかる」と考えると、理解しやすいでしょう。
WISC-4でわかる5つの指標
WISC-4の検査では、以下の5つの数値が結果として出されます。
(※数値は100が年齢相応)
- 全検査IQ(FSIQ): 全体的な知的能力の発達水準
- 言語理解(VCI): 言語理解に関する能力
- 知覚推論(PRI): 視覚的な問題解決能力と空間処理能力に焦点をあてた指標
- ワーキングメモリ(WMI): 情報の一時的な保持と処理に関する能力
- 処理速度(PSI): 知覚運動スキルや処理の迅速さに焦点をあてた指標
このように、結果として出される数値は、個々の知能分野の能力と、総合的な知的能力をあらわすものになっています。
次の項目からは、WISC-4でわかる4つの指標を、さらに詳しく解説していきます。
WISC-4でわかる4つの能力
WISC‐4でわかる4つの能力は次のとおりです。
- 言語理解指標 (VCI)
- 知覚推論(PRI)
- ワーキングメモリ(WMI)
- 処理速度(PSI)
それぞれを解説します。
冒頭でもお伝えしましたが、WISC-4はお子さんが能力的に優れているかどうかを判断するテストではなく、発達段階を確認するものなので結果に一喜一憂しないことが大切です。
言語理解指標 (VCI)
言語理解指標(VCI)は、言語認識と言語理解能力を評価するための指標です。
言語に関する知識、空間力、文章理解、言語的な抽象化などのスキルを測定した数値を指しています。
分かりやすく言うと、言葉をどれくらい理解していて、どれくらい操れるか、行間を読むことはできるか、マンガのコマにあるような「ドドドドドッッッッ」という擬音のニュアンスがわかるかなど、言葉に関することの理解度を数値で表しています。
言語理解が低い子の困りごと
言語理解が低い子どもの困りごとを紹介しておきます。
- コミュニケーションが上手くない
- 教科書を理解するのに時間がかかる
- 友だちから誤解されやすい
- 自分の気持ちを伝えにくい
これらの子どもの特性を理解しておくと、大きな声で注意してしまうような、大人の支援ミスを減らすことができるようになります。
- コミュニケーションが上手くない
- VCIが低いと言葉の理解が難しいため、他の人との効果的なコミュニケーションが難しい場合があります。
質問や指示に対する反応が遅れてしまうことがあり、みんなと同じようにコミュニケーションができない場合がある点に注意しましょう。 - 教科書を理解するのに時間がかかる
- 教室での指示や教科書の理解が遅いため、学習がうまくいかないことがあります。
また言語理解が低いため、書いてある内容をすぐに理解できなかったり、文章をすんなり作れなかったりします。 - 友だちから誤解されやすい
- コミュニケーションが難しいので、友だちと仲良くなりづらく、誤解を受けてしまう場合があります。
また言葉を理解するのに時間がかかるので、友だちとおしゃべりを楽しめない場合もあります。 - 自分の気持ちを伝えにくい
- 自分の考えや感情を正しく表現することが難しいことがあります。
また、言葉の理解が十分でないため、自分の立場を考えて発言内容を選ぶことが困難な場合があります。
知覚推論(PRI)
知覚推論(Perceptual Reasoning)は、主に視覚的な情報を理解し、処理する能力を指します。
子どもが視覚的な情報を取り込み、整理し、問題を解決するために使用する能力全般が該当します。
分かりやすく言うと 『目で見たこと』 を、どれくらい捉えられているか、アウトプットできるかなどの能力が知覚推論です。
ただし、一口に知覚推論と言っても、それを表すには様々な能力が必要になります。
知覚推論(PRI)が低い子の困りごと
知覚推論が低い子どもの困りごとを紹介しておきます。
- 勉強の遅れ
- 手先が不器用
- 方向感覚がつかめない
- 空気が読めない(非言語コミュニケーションの難しさ)
- 運動協調性の低下
それぞれを解説しますが、これらの困りごとも対策をすることで克服できる点を覚えておきましょう。
- 勉強の遅れ
- 知覚推論が低い子どもは、空間処理やパターン認識において苦労します。
図形などを効率的に理解することが苦手なので、数学や科学、図形の理解が遅くなってしまい、授業の時間だけでは理解しきれない状態になってしまいます。 - 手先が不器用
- 空間処理が難しいので、手先の緻密な動きや手の動きを制御することが難しくなる恐れがあります。
手書き文字や習字、工作などの活動に影響を与え、子どもが自分のアイデアを具現化するのが難しくなるかもしれません。
小学生低学年などは、通知表にも反映されやすい内容ですが、できないからといって悲観する必要はなく、できないなりに頑張る姿勢が大切です。 - 方向感覚がつかめない
- 知覚推論が低い子どもは、方向感覚や地図の理解が難しい場合があります。
そして方向感覚がつかめないので迷子になりやすいでしょう。
また、道順を覚えることに苦手を感じやすくなるので、親御さんに頼ることも多くなります。
ただ、この点は人に聞くといったコミュニケーションスキルを上達させることで克服可能なので、親御さんに聞いてきたときは優しく教えてあげましょう。 - 空気が読めない(非言語コミュニケーションの難しさ)
- 視覚的な情報処理が難しい場合、非言語コミュニケーション(表情、ジェスチャーなど)の理解が難しくなることがあります。
非言語コミュニケーションの理解が難しいと他の人とのコミュニケーションや友情の構築に影響を与える可能性があります。
いわゆるKYと呼ばれる人は、視覚的な情報処理が苦手な人といえますが、経験を積み、どのようなときに人はどう捉えるのかを知ることで克服可能です。 - 運動協調性の低下
- 知覚推論の低い子どもは、物体を適切に捉える、ボールを投げるなどの動作において、問題を抱えることがあります。
球技、特に小さなボールを扱う野球では、ホールをつかみそこなったりするなどのミスが多くなります。
知覚推論という言葉は聞きなれないので、一体何かと思いますが、その能力は多岐に渡ります。
道順を覚える、地図を読む等の分かりやすいものから、手先の器用さやボールをつかむ能力も、知覚推論の数値としてあらわされます。
このような能力や動作は日常の何気ないことの中に現れるので、つい「早くしなさい!」などといってしまう場合もあるかもしれません。
しかし、できないことを急かしても子どもに焦りを与えてしまうだけなので、お子さんは何が苦手かを見抜いてあげると親御さんも怒らずに済みます。
ワーキングメモリ(WMI)
ワーキングメモリとは、短期記憶と情報処理の能力をいいます。
WISCで結果として出されるワーキングメモリの数値は、特に作業記憶に関して、情報をどれだけ効果的に維持できるかを測定したものです。
つまり、何か初めてのことをやる場合、手順をどれだけ覚えていられるか、作業に必要な情報を一瞬でどれくらい頭に入れておけるか?が、ワーキングメモリの数値として算出されます。
ただし、ワーキングメモリは、環境の影響を受けやすい機能なので、発達段階や家庭環境などで、発揮できる能力が大きく変わってくる数値です。
ですから、検査の結果が低い数値だとしても、安心できる自分の家で検査結果が異なることもある点に注意してください。
ワーキングメモリが低い子の困りごと
ワーキングメモリが低い子どもの困りごとを紹介しておきます。
- 授業が理解できない
- 宿題をやりきれない
- 注意力と集中力がない
- 計画が立てられない
- 情報を取り間違う
- コミュニケーションが苦手
- 日常生活がスムーズに送れない
- うっかり忘れが多い
それぞれ解説します。
- 授業が理解できない
- 新しい概念や公式を理解するには、一旦のところ短期記憶化をする必要がありますが、ワーキングメモリの値が低いと苦手を感じます。
一旦の記憶の保持に苦手を感じていると、次々に授業が進んでしまい難しさを感じてしまうでしょう。 - 宿題をやりきれない
- 学校生活では、数学と英語と国語の宿題など、一度に複数の宿題が出されますが、記憶を保持できないので覚えていることができず、忘れてしまいます。
また多少、覚えているとしても記憶が混乱し、「なにがなんだか分からない」状態になってしまいます。
ただ、宿題に関しては連絡帳などに正確に記載すれば問題がなく、先生の言ったことをきちんと書き写す訓練をすれば大丈夫です。 - 注意力と集中力がない
- ワーキングメモリの値が低いと注意力と集中力の保持にも苦手を感じます。
たとえば、何かしらの問題を解こうと「考えた」ことを忘れてしまい、何をすればわからなくなることもあるでしょう。
このようなことから、注意力と集中力がないと判断される恐れがあります。 - 問題が解決できない
- 注意力と集中力の問題は何が問題の本質なのか見抜けないことにもつながります。
また記憶も曖昧になってしまいがちなので、時間が過ぎてしまうと「問題はどれなのか」わからなくなることもあるでしょう。 - 計画が立てられない
- 「算数の宿題をしてから、国語の書き取りをしよう」などの計画を、どのように立て、実行していいのかがわかりにくくなります。
一生懸命やろうとしても、子どもの頭の中は混乱した情報でいっぱいなので、優先すべきことが見えなくなり、結果行動しないといった選択を取ることもあります。 - 情報を取り間違う
- ワーキングメモリは瞬間的な判断のための記憶力とも考えて良く、苦手を抱えていると情報を取り間違う可能性もあります。
すると、間違った情報を覚えてしまい、何かしらの問題を起こしてしまうことにもつながるでしょう。 - コミュニケーションが苦手
- 誰かとしゃべる場合には、複数の情報を同時に処理する必要があります。
言葉の意味や声の調子、顔や身振り手振りなど、すべての情報を一度に受け取ることが難しいので、コミュニケーションがギクシャクする恐れもあります。 - 日常生活がスムーズに送れない
- ワーキングメモリに苦手を抱えていると、日常生活の中で、何を先にやるべきかなどの優先順位をつけるのが難しい場合があります。
というのも、短期記憶に苦手を抱えているので、今日何をすればいいかを瞬発的に考えることが苦手だからです。
何をすればいいかの優先順位付けは日常生活でも必ず求められるものですが、苦手意識を抱えているとスムーズに日常生活を送れない恐れもあります。 - うっかり忘れが多い
- 短期記憶に苦手意識を抱えているので、どうしても「あっ、忘れてた!」などのことが頻発して起こってしまう点にも注意しましょう。
ワーキングメモリに苦手を抱える子どもは、これらの困りごとが長期化する可能性があります。
子どもの頃から対策し、忘れないための工夫や観察する習慣を身につけてしまう必要があります。
処理速度(PSI)
処理速度とは、情報接触と、それに対する反応や応答をする際の速さのことです。
処理速度の数値は、注意力や視覚的な処理能力、認知速度などが組み合わされた、総合的な能力が表されたものです。
この数値には、子どもが何か認知する場合の迅速さや効率性も関連しています。
わかりやすく言うと、黒板の板書を書き写す場合など、普通は目で見た情報を意味はわからなくてもそのまま書き写そうとしますが、処理速度が遅いと、因数分解とあっても四文字いっぺんに書き写すことができず、一文字ずつ書くことになります。
ですから、処理速度の数値が低い子は「単純な視覚情報を素早く正確に識別し、書くことが苦手」な訳です。
処理速度(PSI)が低い子の困りごと
では、処理速度が低いと、子どもにはどんな困りごとがあるのでしょうか?
ここでは、ごく一般的な困りごとを紹介しますが、子どもの個性によって異なる場合があることには注意しましょう。
- 勉強の遅れ
- 教科書の内容を理解するのに時間がかかる
- テストが時間内に解答しきれない
- 集中力の低下
- 情報を見落とす
- 勉強の遅れ
- 処理速度が低いと、『テストの問題を考える』『答案を書く』『宿題をやる』などの作業が、他の子に比べて遅くなる可能性があります。
このような特性を持っていると、授業中に先生の言うこと、黒板に書いてあることや教科書に書いてあることを、授業の時間内に理解するには時間が足りません。 - 教科書の内容を理解するのに時間がかかる
- 処理速度が低い場合、情報を十分に理解するのに時間がかかることがあります。
つまり、『授業の内容を理解する』『新しい概念を習得する』などは、他の子より時間がかかってしまいます。 - テストが時間内に解答しきれない
- 処理速度が低いと、テストの時間内に必要な情報を十分に処理するのが難しい場合があります。
時間をかければテストに出された問題を解くことができるけど、限られた時間内にはできないこともあるでしょう。
- 集中力の低下
- 処理速度が低いと、注意力や集中力を保つのが困難な場合があります。このことは学校生活や日常生活に大きな影響があります。
例えば、歯を磨いている最中でも歯磨きに集中しきれないので、ふと頭に浮かんだ心配ごと、「今日は国語が一時間目にある」→「国語の宿題をやってない!」などに興味が移ってしまい、結局、歯磨きを最後まで終わらせることができないなどのことが起こります。
- 情報を見落とす
- 処理速度が低い場合、注意力が保てないので、一部の情報を見落としてしまう可能性が高くなります。
そして情報を見落としているので、理解する内容を間違えたまま問題解決しようとし、不完全な結論を出してしまいます。日常生活や学校生活で「うっかりミスが多い」、テストで「ケアレスミス」が多くなるのはこのためです。
とてもざっくりした言い方になりますが、処理速度が低い子は、『うっかりミス』と『抜け漏れ』が非常に多くなると言えます。
WISCってどこで受けられるの?
WIS-4の検査は、以下の場所で受けることができます。
- 医療機関(児童精神科、小児科など)
- 教育支援センター
- 民間施設(カウンセリングルーム、心理相談室など)
検査費用や検査結果発行費用は、施設ごとに違ってくるので、検査前に問い合わせておきましょう。保険適用されるかどうかも、施設によって違いますから注意してください。
子どもの個性や特性を十分理解し、サポートの方法を工夫していきましょう。
WISC-4の検査を受ければ結果が数値として出されるので、一見、子どもの得意と不得意、苦手などが分かるように感じます。
ですが、得意も不得意も、子どもの個性によって様々で、決してひとくくりにできるものではありません。
ざっくりした方向性をつかんだら、あとは親御さんがサポートの方法をお子さんの個性によって工夫していくことが重要です。
そういった判断を、決して医者まかせ、人まかせにせず、お子さんの一番近くにいるお母さんが、お子さんをよく観察することで出来るようにしてあげてくださいね。