ADHDの子が記憶できない理由と、記憶力を高める方法
「ADHDだし記憶力がないのは仕方ないのかな?」
「覚えられる事と覚えられないことの差が激しくて」
「ADHDの記憶力ってどうなってるの?」
こんなことでお悩みではありませんか?
ADHDを抱えるお子さんは、一般的に記憶するのが苦手といわれています。
でも実は【ADHDだからと言って記憶力が弱い訳ではない】ということをご存じですか?
「えっ!?でもウチの子は単語を覚えるのも一苦労なんだけど…?」
そう驚かれるのは、お母さんだけではありません。
そこで今日は、ADHDを抱えるお子さんの記憶力に着目し、なぜ苦手と考えられているのか、そして対処法をお伝えしていきます。
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ADHDの記憶力には問題があるの?
ADHDを抱えるお子さんの記憶力には問題があるのかと言われると、難しいところです。
記憶力というと、次の2つの能力に分解できます。
● 暗記する能力
● 暗記したものを処理する能力
この2つの能力がそろってはじめて、記憶力があるといわれるのですが、どちらかが欠けていると、記憶力がないと判断されやすいんです。
この中でもADHDを抱えるお子さんは、暗記したものや見たものを脳で処理する能力に不利があるため、一般的に記憶力がないと誤解されてしまうのです。
では、『なぜ脳内で情報を処理する能力に不利があるのか?』を、以下では解説していきます。
ADHDの記憶障害とは
ADHDだけでなく、発達障害を抱えるお子さんは記憶障害を抱えることが多いです。
記憶障害の類型には、短期記憶障害と長期記憶障害があります。
具体的にどのような障害になるのかというと次の通りです。
● 短期記憶障害:指示を忘れてしまう
● 長期記憶障害:アルツハイマーなどの影響により過去の記憶を忘れてしまう
ADHDのお子さんが抱えやすいのは、短期記憶障害だと分かりますね。
長期記憶障害を抱えている場合には、脳の病気になっている可能性があるため、早期に専門医に相談するようにしてください。
ADHDの短期記憶(ワーキングメモリ)メカニズム
では、なぜADHDが短期記憶障害を抱えてしまうかというと、短期記憶(ワーキングメモリ)に苦手を抱えてしまっているからです。
まず、短期記憶とワーキングメモリという単語は同列に扱われやすいのですが、今回はわかりやすく区別してお伝えします。
具体的に短期記憶とワーキングメモリにはどのような種類があるかというと、次の通りです。
● 言語的短期記憶:音や言葉を聞き覚える力
● 視空間的短期記憶:見たり想像したりしたものを覚える力
● 言語性ワーキングメモリ:音や言葉で聞き覚えたものを処理する力
● 視空間性ワーキングメモリ:見たり想像したりしたものを処理する力
この4つのうち、言語・視空間性ワーキングメモリに対して、ADHDは苦手を抱えているという訳です。
そのため、聞いたことや見たことを処理する能力に不利があり、記憶力がないと判断されてしまいます。
とはいえ、言語・視空間的短期記憶、つまり覚える力自体は不利であるとされていないので、単語を覚えたり、歴史の年号を覚えたりといったことは簡単にできます。
「えー-?じゃあどうしてウチの子はできないの?」
と思われるお母さんも多いと思いますが、その理由についてはもっと下の項目で説明していきます。
ADHDの長期記憶メカニズム
では人間の長期記憶がどのように形成されていくかというと、次の通りです。
1. 感覚記憶:五感を通して覚えていくこと
2. 短期記憶:感覚記憶のなかで重要なものを数十秒から数分を覚えていくこと
3. 長期記憶:短期記憶のなかでもとくに重要なものを覚えていくこと
このように感覚記憶から短期記憶、そして長期記憶と重要な記憶が絞られて、やっと覚えていられるということです。
短期記憶の中でも、短時間に処理する能力のワーキングメモリに対してのみ、ADHDのお子さんは不利を抱えているため、一般的に感覚記憶や長期記憶が苦手なことはありません。
注意力や集中力の欠如が短期記憶の保持に影響する
では一体なぜADHDのお子さんが記憶もしくは暗記することが苦手なのかというと、ADHDのお子さんは、次の特性を持っているからです。
● 衝動性・多動性
● 不注意
これらの特性があると、授業中にはこのような状況に陥ってしまうでしょう。
● 先生の話をぼーっと聞いてしまう
● 先生の話よりも興味のあることを考えてしまう
● 集中できない
すると当然ですが、重要な情報が感覚記憶を通して入ってこなくなるため、短期記憶の蓄積量が少なくなり、そして当然、長期記憶化もできません。
このように注意力の欠如や集中力がないことが、最終的には【ADHDの子には記憶力がない】と判断されてしまう理由になります。
ADHDの記憶力と長期記憶の関係性
先ほどまでの事象から、ADHDを抱えるお子さんの記憶力と長期記憶の関係性についてお伝えすると、次のようになります。
● ADHDを抱えるお子さんは処理する能力が不利なだけ
● 覚える力はある
● 覚える力を発揮するための情報を手に入れる集中力がない
つまり、ADHDの子の記憶力向上には集中力を身につけ、覚える力が発揮できるよう、情報を多く獲得していくことが大前提となります。
ADHDの記憶力を向上させる方法
先ほどADHDを抱えるお子さんの記憶力を向上させる方法の大前提は、集中力を向上させることだとお伝えしましたが、その集中力を手に入れた後も、覚える訓練をしていかなければなりません。
というのも、処理する力にも不利を抱えているため、先生の言うことを正確に聞き取れない可能性が高いからです。
小学生や中学校一年生までなら、勉強して学ぶ範囲も難しくはありませんが、年次があがると学習難易度もあがります。
とすると、先生の話や授業の内容を理解できなくなってしまう可能性が高くなります。
以下では、このような状況を回避するための方法を解説していきます。
メモを取るクセを作る
ADHDを抱えるお子さんが先生の話を完璧に理解し、記憶力を向上させるための方法は、メモを取ることです。
なぜならメモを取っておけば、そのときにわからなくても、後で先生に聞けますし、復習もできるからです。
そのためメモを取る習慣を付けていきましょう。
メモ帳を持ち歩けるようにする
メモを取る習慣を付けるためには、必ずメモ帳を持ち歩く必要があります。
というのも、メモ帳がなければメモを取ることすらできませんし、復習もできません。
そのため、持ち歩きやすく、失くしにくいメモ帳を購入し、常に制服もしくは机のなかに常備しておくようにしましょう。
また、学校用と家用というように、2つに分けてもいいでしょう。
一言一句メモするようにする
メモ帳の使い方の最後は、最初のうちは一言一句メモを取ることです。
メモ帳を要約して書いて、何を覚えるべきなのかを理解するのは、そもそもスキルがあるお子さんだけができることですし、大人でもできない人は多くいます。
ですから、まずは先生が言っていることを一言一句、正確に書き写すのが、結果的に勉強する近道となります。
ただ、ずっとメモを一言一句書くのも、授業時間に追いついていくためには不可能と言えます。
ですからメモを取る練習ができたら、一旦要約して要点だけを書けるようにするトレーニングをさせてあげましょう。
ADHDの記憶力で苦手な分野
ここまでADHDを抱えるお子さんが記憶力を向上させる方法をお伝えしてきましたが、苦手な分野も確認しておきましょう。
具体的には次の通りです。
● 先生の指示を理解できない
● 数秒前に考えていたことを忘れてしまう・記憶が飛ぶ
● 早い場所が苦手
● 簡単な計算が苦手
それぞれ解説していきます。
先生の指示を理解できない
ADHDを抱えるお子さんが苦手な分野の一つ目は、先生の指示を理解できないことです。
というのも、冒頭でお伝えしたように、脳の構造として、言われたことを覚えるのは苦手ではないのですが、処理する能力に不利があるからです。
仮に先生の話し方が難しく、明確にわかる話し方がされていなければ、ADHDを抱えるお子さんは難しく感じてしまいます。
数秒前に考えていたことを忘れてしまう・記憶が飛ぶ
また数秒前に考えていたことを忘れてしまったり、記憶が飛んでしまったりするのも考えられます。
この特性は衝動性や多動性によるものですが、授業中に言われたことを忘れてしまう場合もあります。
このような状態が続いてしまうと、どれだけ授業を受けたとしても、少ししか覚えてない、なんてことになります。
そのため先ほどお伝えしたように、先生の説明や言葉をメモ帳に残すといった対策が必要です。
早い板書が苦手
ワーキングメモリに不利を抱えている場合には、早い板書も苦手です。
というのも、書かれたことを脳で理解してノートに書き写すというのも、脳の処理能力が試されるからです。
板書のスピードは先生によって異なりますし、年次があがることで板書される量も増えていきます。
そのため、ある程度は書かれていることをすぐに書き写す能力も高めていきましょう。
簡単な計算が苦手
最後は簡単な計算が苦手なことです。
ADHDを抱えるお子さんは単調な作業には飽きが来てしまい、集中力を途切らせがちです。
そうすると、簡単な計算であってもケアレスミスが目立つようになり、得点できmなくなってしまいます。
これは単純な漢字の書き取りにもいえることなので、勉強のなかでも、簡単で単調なものにも慣れていく練習をさせてください。
ADHDの記憶力を有効に使う方法
では先ほどのADHDを抱えるお子さんが苦手とする分野を告白するためには、どのようにしなければいけないのでしょうか?
具体的には次の通りです。
● 細切れ時間を有効に使う
● 興味を勉強に向かせる
● いつ・何をするかを明確にする
それぞれ解説していきます。
細切れ時間を有効に使う
ADHDの記憶力を有効活用するためには、単調な作業でも集中力を切らさないことが重要です。
そのためは、スキマの時間を有効活用しましょう。
たとえば、『毎朝、登校するまでの10分で英単語を覚える』であれば、時間も細切れになっていますし、タイムリミットが決まっているのでモチベーションもあがりやすいはずです。
他にも『夜寝る前の10分』や『夕ご飯までの10分』など、いつもなら見逃しがちな細切れ時間でも、有効活用すれば、最低でも1時間は勉強時間を確保できるはずです。
興味を勉強に向かせる
衝動性や多動性といった、一見勉強に不向きな特性を持つADHDですが、過集中というASDと同じ特性もあわせ持っているのをご存知でしょうか?
過集中とは、興味を持っているものにトコトン集中したりする特性のことで、集中して体調を崩すこともあるほどです。
この特性をうまく利用できれば、勉強への集中力も向上が期待できます。
そのためにも、お子さんが本来持っている知的好奇心を刺激し、勉強が楽しくなる仕組みを作ってみましょう。
いつ・何をするかを明確にする
ADHDを抱えるお子さんでも、発達障害を抱えてないお子さんでも、いつ何をするかのゴールが決まっていないければ、モチベーションが低くなりますし、集中力も続きません。
そのため、勉強をスタートする前には「今、なぜこの勉強が必要なのか?」をきちんと伝えてからスタートするとよいです。
ただADHDを抱えるお子さんは目的を見失いがちになるので、勉強の合間に何度も繰り返し伝えてあげることも必要です。
ADHDの記憶力は心配しすぎなくても大丈夫!
ADHDの子は記憶力が弱いという訳ではなく、記憶をうまく処理する力が弱く、また特性から短期記憶障害を起こしがちです。
ですが、このような特性があるだけで、長期記憶が苦手であることは確認されていません。
ですから、メモを多用し何度も復習すれば、自然と長期記憶化していくことは可能です。
親御さんは「時間はかかっても、やればできるよね」「自分のペースで覚えれば大丈夫だよ」とお子さんを励まし、必要なトレーニングをさせてあげるようにしてください。
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