【発達障害と記憶障害】お子さんの記憶の苦手を克服する3ステップ
「発達障害は必ず記憶障害になるの?」
「発達障害と記憶障害って同じもの?」
「記憶障害を改善する方法を教えて欲しい」
こんなことでお悩みではありませんか?
発達障害と記憶障害は同じような症状と思いがちですが、実は違います。
混同してしまうのは、両者が脳の欠陥によって引き起こる特徴を持っているからです。
しかしながら両者を混同してしまうと、その後の対応が変わってくるので、違いを明確に知っておく必要があります。
そこで今日は、この両者の違いをメインにお伝えし、各発達障害の記憶に関する支援方法を解説していきます。
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発達障害と記憶障害の関係性
「発達障害ってなに?」と聞かれたときに、正しく理解できていると自信を持って伝えられる親御さんは少ないかもしれません。
「記憶障害」についても同じく、正しく理解している人はほとんどいないと言ってよいでしょう。
どちらの障害も、外見や接したときに受ける印象は健常者に見えます。
しかし、両障害は全くの別物。
両障害の違いを知るために、まずはそれぞれの特徴から解説していきます。
発達障害とは
発達障害は、主に認知や行動面に特定の異常が見られる先天性の障害です。
一時期は親の養育不足によるものと考えられていましたが、現在は否定されています。
また、発達障害に思えるような特性は誰しもが持っていて、発達障害を甘えだとする声がいまだに見られる点には注意しましょう。
これらの点を押さえながら、発達障害のタイプの詳細と記憶について、確認していきます。
発達障害の種類と記憶に関する特性
発達障害といっても種類はさまざま。
発達障害と記憶には深い関わりがあり、記憶障害とよく比較されますが、ここでは代表的な三種類の発達障害について見ていきましょう。
● ADHD(注意欠如・多動性障害)
● ASD(自閉症スペクトラム障害)
● LD(学習障害)
それぞれ解説していきます。
ADHD
ADHDは不注意、多動性・衝動性という二つの特徴を持つ障害です。
ADHDの症例は次のとおりです。
● よく忘れ物や失くし物をする
● 落ち着いて座っていることが困難である
とはいえ、このような症状があるからといってすぐにADHDと判断するのではなく、専門医に診断を委ねるのが一般的です。
ASD(自閉症スペクトラム障害)
ASDは、以下の特性が3歳以前くらいからある発達障害を指します。
● 社会的コミュニケーションに対する不得意
● 行動、興味へのこだわりが強く、意味のない行動でも反復してします
以上の特性から生じる記憶に関する症状は、次の通りです。
● 会話の継続が困難、対人関係の形成・維持が困難
● 強いこだわりがある、同じ遊びや行動を繰り返す、また過度に集中する
数年前までは、アスペルガー症候群や自閉性障害など計五つに分かれていましたが、境界線を引くことは難しく現在の名称に変わっています。
LD(学習障害)
LDは平均的なIQを持ちながら、特定の学習能力に著しい困難を示す発達障害です。
特定の学習能力とは、「読む、書く、聞く、話す、計算する」などを指します。
そのため「読めるが書けない」「書けるが話せない」ということが起こります。
なお、DSM-5(米国精神医学会が発行している最新の診断マニュアル)においては、SLD(限局性学習障害)という名称が用いられているため、今後LDではなくSLDという名称が普及する可能性がある点には注意してください。
記憶障害の類型
ここまで発達障害について詳しく解説してきましたが、記憶障害にもさまざまな種類があります。
そもそも記憶とは、保持時間の長さによる分類と、記憶の内容による分類が可能です。
保持時間による分類は次の通りです。
● 短期記憶
● 長期記憶
また内容による分類をすると、次のようになります。
● エピソード記憶
● 手続き記憶
● 意味記憶
記憶障害は、上記3つの中でどれが困難かによって言い方が変わる点に注意しましょう。
以下で詳しく解説していきます。
短期記憶障害
記憶障害の一つ目は、数秒から数分の記憶に不具合が起こる短期記憶障害です。
● 同じ話を繰り返す
● 今日の日付がわからない
● 物の置き忘れが激しい
事故直後の記憶がぽっかり抜け落ちることがありますが、これは報告例の多い短期記憶障害の症例です。
これは過度なストレスになるため事故の記憶を消し、脳を守っていると言われています。
長期記憶障害
次に数日から数ヶ月、数年の記憶を忘れてしまう長期記憶障害です。
● 定年退職した会社の名前がわからない
● 家族の名前がわからない
● 祝日の名前がわからない
認知症は、短期記憶障害からスタートし長期記憶障害となっていくのが一般的です。
エピソード記憶障害
続いては、「記憶の内容」によって分類された、記憶障害の解説です。
エピソード記憶とは、個人的な経験に関する記憶を指し、陳述記憶という言語やイメージによって思い出せる記憶分類の一種です。
● 家族で旅行したことを忘れている
● 学生生活の出来事を思い出せない
● 今日食事したかどうかわからない
これらの記憶障害は、認知症に良くあるものとして覚えておきましょう。
手続き記憶障害
二つ目は、手続き記憶障害です。
手続き記憶とは、言語化ができない動作に関する記憶を指し、非陳述記憶という記憶分類の一種で、「思い出す」行為が必要ありません。
● 自転車に上手く乗れなくなる
● 箸の持ち方がわからなくなる
● 長年していた楽器が演奏できなくなる
手続き記憶は一度体験し、できるようになると忘れなくなりますが、手続き記憶障害となるとこれらの記憶や技術が失われてしまいます。
意味記憶障害
最後は意味記憶障害です。
意味記憶とは、一般的な知識の記憶を指します。
エピソード記憶と同じく、陳述記憶の一種です。
たとえば「昨日いちごをもらった」はエピソード記憶ですが、「いちごは赤い」は意味記憶です。
具体的な症例をお伝えすると次の通りです。
● 物の名前を思い出せない
● 社会の単語や英語の単語、公式の導出方法などがわからなくなる
名前が出てこないことから「あれ」「あの」などの指示語が多くなり、会話に支障をきたすケースが多くなります。
発達障害と記憶障害の違い
ここまで発達障害と記憶障害の特徴について説明してきましたが、ここからは発達障害と記憶障害を比較しながら違いを説明していきます。
主な違いは以下の通りです。
● 発症するタイミングが違う
● 症状が違う
それぞれ解説していきます。
両者の違い①発症するタイミングの違い
発達障害と記憶障害の違いの一つ目は、発症のタイミングです。
発達障害の多くは生まれつきの脳にある異常が原因ですが、記憶障害は生まれたあとに何かしらの出来事で脳に異常が起きる場合がほとんどです。
このように「先天的」か「後天的」かは、発達障害と記憶障害の大きな違いとなります。
両者の違い②症状が異なる
次に、症状の違いがあげられます。
発達障害は、特定の異常な認知(こだわりが強い、我慢できないなど)や行動が主な症状です。
一方、記憶障害は記憶の喪失や新しく覚えられないことが主な症状です。
また、発達障害は社会生活を送るにあたって困難があるからといった理由で、障害として認められているという傾向もあります。
そのため、発達障害は「社会生活・日常生活」が難しく、記憶障害は「日常生活だけ」が難しいという考え方もできます。
発達障害と記憶障害が混同する理由
ここまで発達障害と記憶障害の違いを説明しましたが、両者はたびたび混同されます。
実際に誤診されたケースも報告されていて、長年診察を手掛ける専門医ですら慎重な診察が求められます。
このように発達障害と記憶障害が混同される理由は、以下の通りです。
● 症状が似ているように見えるため
● 因果関係が似ているため
それぞれ解説していきます。
症状が似ているように見える
発達障害と記憶障害が混同する理由の一つ目は、症状が似ているように見えることです。
症状診断を主とする精神医学の世界において、症状が似ている点は大きな論点となっています。
発達障害と記憶障害の症状は、ともに「つい先ほどのできごとが五感を離れた途端思い出せなくなる」です。
この症状の具体例をお伝えすると、以下の通りです。
● 昼休憩を終えると午前中にしていた作業内容を忘れる
● 上司から聞いた指示をあとで思い出そうとしても思い出せない
一見すると似ていると思われるかもしれませんが、両障害の症状はまったく同じという訳ではありません。
発達障害に見られる症状は短期記憶力の欠如、記憶障害は短気記憶力の欠如に加え、長期記憶や他の記憶への干渉も見られます。
発達障害は数秒から数時間の記憶、記憶障害は数秒から数年の記憶が抜け落ちます。
この時間による違いが判断材料の一つになります。
因果関係が似てしまっている
発達障害と記憶障害が混同されるもう一つの理由は、症状が出る原因です。
両障害とも脳器質の変形、または損壊によって引き起こされます。
この脳の異常が、記憶に作用する神経ネットワークにノイズを生み障害が発生すると考えられています。
しかし、原因が同じ脳器質の変形または損壊であっても、発達障害と記憶障害には発症タイミングという違いがあります。
いずれにしても脳器質の異常が原因なので、両障害はたびたび混同されているという点に注意しましょう。
発達障害のお子さんが記憶の苦手を克服する3ステップ
ここまで発達障害と記憶障害について解説してきましたが、発達障害による記憶の不具合と克服方法を紹介します。
必要なステップは以下の通りです。
1. 記憶のメカニズムを知ること
2. 各発達障害の苦手を知ること
3. 各発達障害ごとに支援すること
それぞれ解説していきます。
記憶障害を克服する3ステップ①記憶のメカニズムを知る
発達障害における記憶障害を克服するためのステップの一つ目は、記憶のメカニズムを知ることです。
というのも、どの記憶が弱いかを知らなければ、学習を支援する場合、どうしてあげればいいのか、周囲の大人が理解できないからです。
短期記憶によってインプットした情報は、ワーキングメモリによって整理されます。
また短期記憶とワーキングメモリは、二種類ずつに分類されています。
これらをまとめると次の通りです。
● 言語的短期記憶:音や言葉を聞き覚える力
● 視空間的短期記憶:見たり想像したりしたものを覚える力
● 言語性ワーキングメモリ:音や言葉で聞き覚えたものを処理する力
● 視空間性ワーキングメモリ:見たり想像したりしたものを処理する力
なお、短期記憶とワーキングメモリを同一視する学説もあり判断がわかれるところではありますが、当記事では便宜上、四種類に分けて解説していきます。
記憶障害を克服する3ステップ②発達障害のどこに苦手を感じているかを知る
続いては、各発達障害のどこに苦手を感じているかを知ることが大切です。
というのも、発達障害の種類によって特性が異なり、苦手とする分野も異なっているからです。
そのため、まずは各発達障害の何を苦手としているかを知る必要があります。
以下ではワーキングメモリに関する4つの概念と、各発達障害が苦手とする記憶領域を照らしあわせながら説明していきます。
ADHDのお子さんが苦手とする記憶
ADHDのお子さんが苦手とする記憶領域は、以下の通りです。
● 言語性ワーキングメモリ
● 視空間性ワーキングメモリ
これらの苦手を抱えるため、以下のような記憶障害が起こる可能性があります。
● 指示されたことをすぐに実行できない
● 片付けが困難
● 文章の内容を読んでいる途中に忘れてしまう
● 目の前の刺激に反応してやるべきことを忘れる
ASDのお子さんが苦手とする記憶
ASDのお子さんは言語的短期記憶が苦手なので、以下の記憶障害を引き起こす可能性があります。
● 指示されたことをすぐに忘れる
● 話しかけられてもすぐに反応できない
● 興味のない語彙の記憶が困難
LDのお子さんが苦手とする記憶
まずLDは以下の3つに分類でき、それぞれ能力に大きな差があります。
● 読み障害(文字を読むのが難しい)
● 書き障害(文字を書くのが難しい)
● 算数障害(計算するのが難しい)
LDの各障害は、どれか一つ、もしくは併発することもあります。
それぞれの特徴を見ていきましょう。
読み障害による記憶障害
まず、読み障害のお子さんが苦手とする記憶領域は、以下の通りです。
● 言語的短期記憶
● 言語性ワーキングメモリ
これらによって、以下の記憶障害が起こる可能性があります。
● ひらがなやカタカナが覚えにくい
● 文章読解が困難
書き障害による記憶障害
次に、書き障害のお子さんが苦手とする記憶領域は以下の通りです。
● 視空間的短期記憶
● 視空間性ワーキングメモリ
同様にして、以下の記憶障害も確認しておきましょう。
● 漢字が覚えにくい
● 思うように鉛筆を動かせない
算数障害による記憶障害
最後に算数障害のお子さんが苦手とする記憶領域は、以下の通りです。
● 言語性ワーキングメモリ
● 視空間性ワーキングメモリ
同様にして、以下の記憶障害も確認しておきましょう。
● 暗算や筆算が難しい
● 算数の文章問題が解けない
記憶障害を克服する3ステップ③特性にあわせた支援を行う
各発達障害の苦手な点を知ったあとは、適切な支援を行っていきましょう。
視覚障害者に補聴器が適さないように、各発達障害ごとで違った支援が必要になります。
ただし、同じ発達障害でも個人差があることを忘れてはいけません。
障害間だけでなく個々人にも差があることを念頭に置いて、支援を行っていきましょう。
ADHDのお子さんへの学習支援
まず、ADHDのお子さんへの学習支援です。
ADHDのお子さんは、二種類のワーキングメモリがともに低い傾向があります。
そのため、聴覚からの情報に弱く、聞いただけでは今後の見通しも甘くなりがちです。
ですから、学習支援の場合は次の二点を必ず行ってください。
● 指示は必ず文面に起こす
● 優先順位順のTo doリストを作成して視覚化する
ASDのお子さんへの学習支援
次に、ASDのお子さんへの学習支援です。
ASDのお子さんの記憶特性はADHDのお子さんとも似ており、言語による伝達を忘れてしまいがちです。
ですから、支援の例は次のようになります。
● 指示を文面に書く
● 優先順位を付ける
● 時間を区切る
過集中を起こしてしまうのもASDのお子さんに見られがちなので、時間をきちんと区切って過集中を起こさせない工夫も大切な学習支援です。
LDのお子さんへの学習支援
最後はLDのお子さんへの学習支援ですが、記憶力の特性に応じて支援方法を分けましょう。
具体的には次のような支援例が存在します。
● 読み障害:読み聞かせ
● 書き障害:文字のなぞり書き
● 算数障害:数字と具体的な物を対応させた視覚的学習、算数文章題の図式化
このように各特性にあわせた学習支援を行っていくのが効果的なやり方です。
発達障害と記憶障害の違いをきちんと理解し、特性に合った支援を工夫してあげよう!
発達障害は先天的な症状であるのに対して、記憶障害は後天的に発症する可能性が高いです。
もちろん発達障害と記憶障害には重なる部分もあって誤解しがちですが、異なる点を覚えておきましょう。
また各発達障害にも苦手とする記憶領域があるため、発達障害の特性に応じた学習支援が必要です。
私たちのサイトでは、この他にも様々なお子さんの学習や学校生活に役立つ情報を取り扱っているので、興味がある方はぜひ読んでみてくださいね。