ロールシャッハテストの目的や歴史、検査のやり方
「ロールシャッハテストってどういうテスト?」
「ロールシャッハテストの目的は?」
「これで何がわかるの?」
最近ロールシャッハテストが流行っているようですが、一体何がわかるのか大抵の人は知りませんよね。
ロールシャッハテストはインクのシミを活用した心理検査方法の1つです。
とても有名なテストであり、漫画や映画のようなフィクションの世界でも使われることも多く、心理学に詳しくない人であっても名前だけは聞いた事がある親御さんも多いのではないでしょうか?
でもロールシャッハテストという言葉を知っていても、具体的にはどのようなテストなのか、専門家でない人にはまるで未知の世界です。
そこで今日は、ロールシャッハテストの内容から歴史まで、分かりやすく解説していきます。
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ロールシャッハテストでわかること
ロールシャッハテストの歴史や検査方法といった細かい内容に移る前に、まずはロールシャッハテストを通して何が分かるのかをざっくりと確認しておきましょう。
ロールシャッハテスト自体は性格検査の一手段であり、テストを受ける被験者のパーソナリティを読み解きに使用されます。
テストを通して得た情報を分析し、性格や個性、思考の過程に一定の解釈がつけられます。
分析方法によって分かる内容は変化しますが、今回は日本のロールシャッハテストでよく分析されているストレスを感じた際の動きと情緒面について簡単に確認しておきましょう。
ロールシャッハテストでわかること①:ストレスを感じたときの動き方
簡潔に言うとストレスを感じた際の対処と耐性です。
一定の状況に関連したストレスの状態などが測定されます。
性格検査は治療にも利用されるため、本人がどんな状況にストレスを持ちやすい傾向にある人なのか等を判断をします。
ロールシャッハテストでわかること②: 情緒面の測定
情緒、つまり感情の抱き方が測定されます。
測定の範囲は広く、緊張しがちな性格や抑うつな性格を見取ったり、対人関係の内閉具合を見取ったりします。
愛情への欲求具合を分析もあるのです。
情緒と一口に言っても、情緒的な反応や統制の具合など、非常に細かい内容が分析対象となります。
ロールシャッハテストでわかること③:あくまで内面的な事を知るための一手段
非常に細かい内容まで分析されるロールシャッハテストですが、仮に受けたとしても全てを真実として受け入れる必要はありません。
元々、色々な側面を持つ人の複雑な内面は完璧に読み取るのが難しく、性格検査はあくまでも参考程度の判断材料にしかならないのです。
テスト結果の扱いは医者などの性格検査を利用する側に任せて、被験者自身があまり重く捉えないようにしましょう。
ロールシャッハテストはどこまでいっても、自身の内面を知るための一手段でしかありません。
ロールシャッハテストとは
次はいよいよロールシャッハテストの現在の現状や歴史、そもそも性格検査とは何なのかといった細かい話に移っていきます。
後で詳しく紹介しますが、ロールシャッハテストは投影法と呼ばれる性格検査の1つで、インクのシミを見て頭に何が思い浮かぶか、被験者のイメージを話させることによってパーソナリティを測定する手法です。
左右対称のインクのシミを10枚分被験者に提示し、その反応を見ます。
日本では片口安史考案の「片口法」とエクスナーがまとめた「包括システム」の2種類のロールシャッハテストが有名ですね。
テストの種類によって実施方法は大きく異なります。
例えば、片口法ではインクのシミに対する反応時間や無回答検査の対象となったりします。
ロールシャッハテストとは①:ロールシャッハテストの現状
ロールシャッハテストは有名ですが、現代では学校臨床や特定の採用試験など様々な場面で使われているものの批判も多く、必ずしも重要視される性格検査とは言えなくなっています。
合理性が重要視される現代では、ロールシャッハテストのような検査の妥当性が疑問視され批判の対象に挙げられることもあります。
ロールシャッハテストにはテストの妥当性や規準となるデータ、検査に積極的に反応してくれる協力的な人ほど不適応な人だと判断されてしまう構造上の欠陥など様々な問題をあったのです。
もちろん、批判を受け止めて改善は行われていましたが、ロールシャッハテスト研究の第一人者であり、広く採用されている包括システムをまとめていたエクスナーも2006年が死去してしまいました。
そして、エクスナーは後継者を指名しなかったため、ロールシャッハテストの代名詞とも呼べる包括システムは更新できなくなってしまったのです。
しかし、現状では新体系としてR-PAS(ロールシャッハ・パフォーマンス・アセスメント)の研究が進められており、批判された内容を改善した新しいロールシャッハテストのシステムが普及しています。
ロールシャッハテストとは②:ロールシャッハテストの歴史
ロールシャッハテストの歴史自体は1920年代頃から始まりました。
1921年にスイス出身のフロイト派精神分析家のヘルマン・ロールシャッハが発表した『精神診断学』でインクを使ったテストのアイディアに関する言及が始まりました。
残念ながらヘルマン・ロールシャッハ本人は翌年1922年に37歳という若さで亡くなりますがテストの研究は続きます。
何故なら、研究がアメリカで心理学を学んでいたサミュエル・J.ベックの目に留まり、彼がスイスのチューリッヒに留学してロールシャッハ検査の研究に励むことになったからです。
彼が研究成果をアメリカに持ち帰り、診断や論文でロールシャッハテストを利用したため、アメリカでのロールシャッハテスト研究が進められました。
ちなみに、後に包括システムを完成させるエクスナーはベックの助手を務めた経験があります。
また、ドイツ出身のブルーノ・クロッパーもアメリカでの研究に関与した一人です。
ブルーノ・クロッパーはナチスドイツの台頭からアメリカへ亡命した心理学者の一人ですが、彼は亡命の前にスイスでユングらと研究を行う機会があり、その際にロールシャッハテストを知りました。
ロールシャッハ専門誌の編集者やロールシャッハテスト研究所の所長、精神分析法の1つである投影法の学会会長を務めた彼もロールシャッハテストの完成に大きく関与した1人です。
偉大な2人の研究家が始まりとなって、アメリカではロールシャッハテスト研究が盛んに御壊れるようになりました。
しかし、研究の派閥によっては結果の分析方法や意味付けが異なってくるという問題も同時に多発してしまったのです。
そこで、登場したのがジョン・E・エクスナーによる包括システムです。
エクスナーはベックやクロッパーなど主要なロールシャッハテストの実施方法を10年掛けて比較分析し、最終的にはまとめて包括システムという1つの体系に統合させました。
それ以降、批判が大きくなる21世紀までの間、包括システムを使ったロースシャッハテストは精神医療や教育福祉、司法などの多くの場面で被験者の心理を探るアセスメントツールとして活躍していくことになります。
ロールシャッハテストとは③:性格検査の分類
ここではロールシャッハテストの位置づけを理解する上で助けと性格検査と分類について紹介していきます。
性格検査は知能検査や、発達検査と並んで心理検査の1つに分類される検査です。
IQ検査を代表とするのが知能検査、認知機能や社会性、運動能力を調べる発達検査で、性格検査はその名前の通り性格(パーソナリティ)を調べる検査となります。
性格検査は大きく分けて質問紙法・投影法、作業検査法の3つの手法に分けられていますので、詳しく確認していきましょう。
ロールシャッハテストの質問紙法
質問紙法は用意された質問の回答結果によって被験者のパーソナリティを分析する方法です。
分かりやすい例で言うとアンケート調査のような形式で行う審査で、投影法や作業法に比べると実施や結果の整理が簡単というメリットもあります。
性格検査だけでなく、世の中の意見や認識を集計する社会調査などにも活用されるケースも多いです。
難点としては、設問が簡潔的な傾向にあり被験者が意識的すれば、簡単に回答内容を偏らせることができる点が挙げられます。
質問の意図が読み取りやすいケースも多いので、被験者が素直に答えずに誤った分析結果が出てしまう危険性があります。
それを考えると、あてにならないテストと言っても過言ではありません。
ロールシャッハテストの作業法
作業法は決まった一定の行動を行わせ続けることで、被験者のパーソナリティを調査する手法です。
日本の職業検査にも使われている「内田クレペリン精神検査」などは特に有名です。
クレペリン検査は一桁の足し算を数十分間続ける検査で、分簡の作業量や変化の法則から職業適性や性格を判断します。
健常的な人のデータとのズレや類似具合などからパーソナリティの評価がなされるのです。
日本では教員採用試験や交通業の職業試験で採用されているケースが多いのですが、どのように活用されているかは不透明です。
ロールシャッハテストの投影法
投影法は曖昧さを利用した性格検査方法で、ロールシャッハテストも投影法を使った検査の1つに入ります。
他に有名なものとして、被験者が描いた木の構図や様子を元に心理状態を検査するバウム(ツリー)デストや、48枚の顔写真を好きな写真と嫌いな写真に分別してもらうソンディ・テストなどがあります。
被験者の表面的な意識が分かりやすい質問紙法と比べて、恣意的な回答が出来にくい分、無意識の領域まで踏み込むことができるのがメリットです。
ただし、結果の整理が煩雑かつ、検査の難解性によって被験者に掛かる負担も大きいデメリットがあります。
その上、ロールシャッハテストで批判があったように、信頼性や妥当性に欠けるという批判も大きく、これもあてにならない検査法と思っても過言ではありませせん。
ロールシャッハテストの目的~現代でもロールシャッハテストが使われる理由~
この項目ではロールシャッハテストが実施されることのある職業適性試験や資格試験、心理カウンセリングについて、何故ロールシャッハテストが利用されているのが実施の目的を紹介していきます。
ロールシャッハテストの目的①:職業適正試験
クレペリン検査と並んで職業適性試験にロールシャッハテストが課される場合があります。
知能を図るというよりは、人格に歪みがないかという面を重視して設けられていることが多いです。
あらかじめ選択肢が用意されており、ポジティブな回答とネガティブなイメージの回答に分けられている場合があります。
例えば、飛んでいている蝶や鳥といった回答から、飛び散った血しぶきや不気味な悪魔といった具合にです。
このような回答例は見れば質問意図がくみ取れる為、自分が被験者となる場合には、悪い評価をされよう、良いイメージのものを答える人がほとんどです。
ロールシャッハテストの目的②: 資格試験
臨床心理士の資格試験などでもロールシャッハテストは関わってきます。
ただし、性格検査として実施されるわけではなく、資格の認定に必要な知識を筆記試験のテストという形で問われます。
資格によっては、ロールシャッハテストの知識が最低限必要な場合があります。
ロールシャッハテストの目的③:心理カウンセリング
心理的な悩みを解決に導く心理カウンセリングの分野でもロールシャッハテストが実施される場合があります。
心理的な問題の中には、患者本人も気が付いていない無意識の悩みや問題が発生していることも少なくありません。
そこで、患者の内面や考えを探る目的でロールシャッハテストが実施されます。
場合によっては時間を置いて複数回のテストが実施され、治療の過程で内面がどう変化していったのかを調査するケースもあります。
ロールシャッハテストの応用先
無意識の領域を探るロールシャッハテストの主な応用先は、やはり診断ツールとしてのテストです。
初めは無意識の領域を探るだけだったロールシャッハテストですが、実権を重ねるにつれて、被験者の状態と反応に一定の傾向があるが分かってきました。
例えば、躁鬱や統合失調症の患者は10種類の図柄に対してその数より多くの反応を示したり、回答拒否の回数が多いといった傾向です。
ロールシャッハテストはそれらの集められたデータを利用して、無意識を探るだけでなく被験者の性格を診断する道具に応用されています。
アメリカ・日本におけるロールシャッハテスト
先ほど紹介したように、スイスで生まれたロールシャッハテストはアメリカで盛んに研究が行われました。
実は日本でも1930年頃の段階からロールシャッハテストの研究が行われてきた歴史があります。
アメリカと日本では国民性にも大きな違いがあり、アメリカ人のデータを使った分析を日本人にもそのまま適用することは難しいため、日本独自のテスト方式が研究されてきました。
アメリカでは包括システムが主流となりましたが、日本では片口安史が提唱した片口法が普及するようになりました。
現在の日本では、包括システムと片口法の2種類のアプローチによるロールシャッハテストが主流となって行われています。
ロールシャッハテストのやり方
ロールシャッハテストをより詳しく知りたい方向けに、テストの細かい実施方法を紹介していきます。
ロールシャッハテストのやり方①:テスト法
ロールシャッハテストの内容自体は上述したように、インクのシミが何に見えるかを計測していく形になりますが、テストを受ける環境も大切にされます。
被験者がテストに集中できるように第三者が立ち会わず、被験者と検査者の二人だけの形を取るのが理想的です。
被験者へのストレスを極力避けるため向かい合わず、隣り合わせで並びながら試験を行います。
被験者に掛かるストレスが大きく、インクの模様を集中して見つめる都合上、ロールシャッハテストは細心の注意を払って、被験者がリラックスして臨めるようにセッティングされます。
ロールシャッハカード
ロールシャッハカードはテストの要となるインクの模様が描かれた10枚1セットのカードです。
インクの染みで偶然できた10枚の模様に対する反応を見るのがロールシャッハテストなので必需品となる存在でもあります。
原版のスイス版は定価で2万円近い価格となっており、無料公開などもされていないため、インターネットなどでロールシャッハテストの模様を全て探そうとしてもかなり難しいでしょう。
記録用紙
ロールシャッハテスト用の記録用紙があります。
例えば、日本文化科学社発行の記録用紙は、10枚分のテストの記録と採点、全体の整理などの項目が設けられており、20名分の用紙で約9,000円近い値段となっています。
ロールシャッハカードを販売している業者は記録用紙も同時に扱っているケースが多く、カードを販売しているWEBサイトでは、カードと同じ場所で別売りされたりもしているので、同時に入手が可能です。
整理用紙(K-Ⅷ)・構造一覧表
整理用紙(K-Ⅷ)は片口式で使う用紙で構造一覧表は包括システムで使う用紙です。
整理用紙(K-Ⅷ)は分類表・基礎整理表・まとめ表・サイコグラム・図版の写真短縮版が含まれています。
構造一覧表は、包括システム構造一覧表とも呼ばれ、包括システムの最新版に準拠した記録用紙で、金剛出版から発行されています。
どちらも分析を効率的に進める上で必要な道具です。
ロールシャッハテストのやり方②:テスト評価方法
ロールシャッハテストはテストなので、被験者が残した反応を採点しなければいけません。ロールシャッハテストの評価方法を確認していきましょう。
ロールシャッハテストのガイドライン
ロールシャッハテストの検査には基本的なガイドラインとして4つのチェックポイントが用意されています。
被験者のインクの染みでできた図形に対する反応を見る上でのポイントは以下の通りです。
①反応回数や拒否回数、反応に掛かった時間など
②被験者の図形以外に対する反応(色彩や動き)はあったか
③反応は図形全体に対するものか、またはどの部分に反応しているか
④被験者にとって図形は何に見えたのか
以上の4つが評価のための基本的なガイドラインとなっており、ロールシャッハはこれらのガイドラインに沿った評価方法から、被験者たちの性格を分類します。
スコアリング
ロールシャッハテストによって被験者が起こした反応を区別し、採点・診断する手法をスコアリングシステムと呼んでいます。
反応が形態(F)の運動(M)などに分けられ、F+%が25%というような形で採点が行われるようになっているのです。
スコアリングシステムの現状
歴史の項目で触れたようにロールシャッハテストでは複数の流派が生まれ、スコアリングシステムも流派に合わせて複数開発され混乱を生んだ経緯があります。
初期に作られたベックとクロプファーのアプローチ方法は、ロールシャッハの原則を守った前者とユングの思想を取り込んだ後者で大きな違いがあり、絶対視できるシステムがありませんでした。
最終的に複数開発されたスコアリングシステムはエクスナーによって「包括システム」としてまとめられ、現在の主流なスコアリングシステムとして使われています。
ロールシャッハテストの信頼性
ただし、信頼性に関しては疑問が残ることがあり批判の意見も少なくはありません。
指標の妥当性やデータの規準値となっている集団の偏り(健康度の高い人が多い)、検査に協力的で反応数の良い人ほど不適応的な人間だと判断されるシステム上の問題など、いくつもの批判がありました。
それでも、有力な性格検査方法の1つとして、現在ではエクスナーの死去によって改善が難しくなった包括システム(エクスナー法)に代わり、より信頼できる新体系のロールシャッハテストとしてR-PASの研究が進められています。
ロールシャッハテストのやり方③:ロールシャッハテスト受験機関
ロールシャッハテストは医療機関で実施され、一部のメンタルクリニックなどでも実施されている場合があります。
テストが実施されている機関ではロールシャッハテストだけでなく、バウムテストなどの他の性格検査も大体実施されているので、受けようと思った場合には医療機関に相談して適切な検査方法を選ぶようにしましょう。
ロールシャッハテストで悪い結果が出たとしても、決して重くとらえる必要はありません
ロールシャッハテストは批判の多いテストですが、それでも多くの研究がなされてきた歴史を持つ有力な性格検査方法の1つでもあります。
とは言え検査方法や回答例があまりにも作為的で全面的な信頼はできないので、あくまでも目安のひとつとして捉える必要があります。
そして万が一、悪い診断結果が出たとしても、「あてにできない検査」「検査作成者の意図が丸見えな為、作為的に回答できる検査とは呼べないもの」という事実を思い出し、深刻にとらえないようにしましょう。